(3)さて,多くの学会は,会員の大半が大学などにポストを持つ研究者,それを目指す若手,退職した名誉教授です.実学の分野では業界関係者も会員です.ところが科学史学会では,純粋な興味関心から会員である方が多く,学会の財政が支えられています.
非研究者(とりあえずこう呼びます)の会員が多いことは大変有り難いことです.会費収入もさることながら,科学史への関心は,研究者にとって励みになります.しかしそういう会員に対して,学会は会費に見合うサービスを提供しているでしょうか.
サービスというと語弊がありますが,会費は年9千円です(欧文誌を受け取らない場合).その値打ちがないと思えば退会するのは自由です.研究発表や論文投稿をする(可能性のある)研究者とは立場が違います.
現状でも,多くの「非研究者」,つまり研究発表が目的でなく,科学史で飯を食っているわけでもない方々が会員となって下さって,学会の財政が支えられています.それならば,この方々にとって学会がもっと魅力的であればさらに会員が増えるのではないか.
『科学史研究』だけなら年間5600円で済みます.年会(いわゆる学会)は,発表するのでなければ非会員でも参加できて,参加費は会員と同額です.すると,純粋な計算では『科学史通信』が年3400円ということになります.いくらなんでもそれは高い!
これは10年前に会長選挙に立候補したときに提起した問題です.その後,2009年の11月から,『科学史通信』で「科学史ミニ講義」と「私の授業」という連載が始まりました.これは総務委員会の発案ですが,私の問題提起もきっかけになったと思います.
これをもっと充実させたいと思います.印刷費が問題ですが,印刷費には頁数が大きく影響するので,判型を大きくして内容を増やせないかと思います.一方で,これ以上の内容拡充は総務委員会にとって負担です.『通信』の連載記事編集スタッフが必要でしょう.
『科学史通信』の拡充の他には,直接参加できる催しが考えられます.「科学史学校」は長年開催されていて,これは素晴らしいことですが,内容は個々の講演者の専門的な研究のことが多く,「学校」というよりは「専門的講演会」に近い感じです.
しかし科学博物館の有賀さんが先日実施したアンケートでも,通史の需要は大きいようです.title="https://twitter.com/ariga_prdgmmkr/status/801347170372829185">twitter.com/ariga_prdgmmkr…
科学史学会でも,通史的な「授業」は歓迎されそうです.会員は無料,非会員は資料代という形もありえます.しかし学会のリソースは無限ではありません.そこで,研究発表をする若手にこういう講演も同時にお願いしてはどうかと,前の若手研究者支援のツイートで言ってみました.
前の提言は,顔を合せて懇談の機会を作る,とくに全体委員が,学会発表や論文投稿をしない会員の声を聞くということにも重点があります.