脇道にそれます.Isisの最新号(107巻4号)にThe Scientific Revolution: Five Books about Itというエッセイ・レビューが載っています.対象のうち1冊は,日本語訳も出ているワインバーグの『科学の発見』です.評者はJohn Henry
この本は一次資料としてのみ価値がある,つまり物理学者ワインバーグの業績に関心のある20世紀物理学史の研究者の貴重なソースであると喝破しています.私も,一流の科学者の無教養を長く後世に伝える資料となると思います.教養がなくてもノーベル賞はとれる.
かつて『科学史研究』誌上で適切に酷評された山本義隆の著作の方がずっとすぐれているでしょう.
このレビューでは,5冊の本のうちFloris CohenのThe Rise of Modern Science Explained: A Comparative Historyが高く評価されています.
この本は2010年に出た同じ著者のHow Modern Science Came into the World: Four Civilizations, One Seventeenth-Century Breakthroughのいわば簡約版とのこと.
オランダ発の科学史書といえばDijksterhuisを思い出します.オランダやデンマークからは人口比で驚くほど多くのすぐれた科学史研究者が出ています.理由としては,小国ゆえに多言語を習得していることくらいしか私には思いあたりません.
ワインバーグの本について,科学史学会の和文誌では書評を準備しているのでしょうか.これを適切に批判しないと科学史の存在意義がなくなってしまいます.こういうことも和文誌編集委員会に要望したい.
和文誌に話がいったところで,金森修さんの追悼特集はいつ出るのでしょうか.先日掲載された梶雅範さんの追悼文より1行でも短かったら学会誌の私物化という批判を免れないでしょう.そのようなことは,真摯で公正な人柄であった泉下の梶さんご自身が喜ばれないことと思います.